車とバイクと比べたら彼は断然後者の方が好きだった。昔から読んでいた愛読書の漫画に750ライダーというものがあったからだ。体格的にそんなに大きな者は乗れないので彼はゼロハンにまたがっていた。それでも風を思いっきり感じる事は出来たし彼だけの乗り物なので思う存分乗り回した。それはもう快感以外のなにものでもなかった。彼は朝起きると必ず挨拶をしにガレージに向かった。そしてそのボディーを愛おしげにさすってやるのだ。それが彼の一日の始まりだった。彼は当時何も仕事をしていなかったので毎日近くを走り回った。時には一時間程かけて映画館まで行く事もある。その途中は峠のカーブがあり彼はそこが大好きだった。カーブにさしかかると身体をおもいっきり外側に倒すとちょっとしたスリルが味わえるからだ。それが彼は大好きだった。時には死んでもいいと思う事もあった。しかしもちろんそんな事はないようにエンジンブレーキでスピードは押さえている。彼の青春はそれと共にあったといっても過言ではない。